バルカナイズド製法を化学的・歴史的に解説!【スニーカーと加硫ゴムの歴史】

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スニーカー買うぞっ!と検討してると目に飛び込んでくる「バルカナイズド製法」というワード。

なんかよくワカランがイイもんなんだろう」くらいの認識でいるキミキミ。バルカナイズド製法という技術についてざっくりチェックしときましょう!


だって…なんでそんなにありがたがられるのか不思議じゃありません?

バルカナイズ製法のスニーカーのよいところ!

バルカナイズド製法といえば、コンバースオールスターが代表的な存在。

バルカナイズド製法が登場したことで、ゴム底の運動靴を作れるようになりました。それまでソール素材の主流はでした。

革底と比較したゴム底のメリット

  • 屈曲性に優れる

  • 地面が濡れていても滑りにくい

  • グリップ性に優れる

また、ゴムの次にソール素材の主流となったのは石油系のプラスチック。ポリウレタン(PU)などのいわゆるウレタン底です。 プラスチックといえども弾力性があるのだ!

キッチンスポンジもポリウレタンの一種です。

ウレタンは軽いし、すりへりにくいし、安価でクッション性も高い。スニーカーソールとしてはゴムより機能性に優れる素材なわけです。

しかし…… 残念ながらウレタン底は数年もすると加水分解が起こってしまう!

下駄箱のミステリー?! ウレタン底の靴(発表情報)_国民生活センター

靴箱にしまっておいた昔のスニーカーを履こうとしたら、ソールがボロッボロのカスッカスに破損していて履けなくなっていた~!!なんて経験ありませんか?

あれが加水分解です。空気中の水分がポリウレタンと化学反応を起こしてポリウレタンが分解してしまうのです。

一方、バルカナイズド製法のゴムソールは加水分解しにくいという特徴を持ちます。

バルカナイズド製法とは?

ではそもそも、バルカナイズド製法とはどんな製法なのでしょうか。

バルカナイズド製法/バルカナイズ製法とは、生ゴム(天然ゴム)に硫黄を加えて加熱・加圧する工程。

【バルカナイズド製法によるスニーカー工程】

  1. アッパー(スニーカーの上部)を縫う

  2. ソールの側面と底に手作業で未加硫ゴムを接着

  3. 加熱してソールとアッパーを圧着

はじめのころはスニーカーの底だけにゴムを接着していたところ、剥がれやすいので補強を兼ねて側面にもべろ~んとゴムを貼る‌ことになったようです。

加硫:化学からバルカナイズドを知る!

バルカナイズは「加硫(かりゅう)」とも言います。バルカナイズド製法が発見される前、製品加工用に使っていたゴムは天然ゴムでした。

天然ゴム製品とは輪ゴムをイメージしてもらえればよいと思います。

この黃褐色が天然ゴム本来の色です。

天然ゴムには、次の弱点があります。

  • 高温でふにゃふにゃになる

  • 低温でかちかちに固まる

  • べたべたする

  • 劣化しやすい

1回でも使うとすごいスピードで劣化。放置してるだけでも劣化する。など、天然ゴムの弱点は輪ゴムをイメージしてもらえればわかりやすいかと。

輪ゴムはそれはそれで便利ではありますが、天然ゴムは製品素材としては利用価値の低いものだったのです。

そんな天然ゴムの製品素材としての価値を高める化学工程が「加硫」です。 f:id:jarmusch:20190209103806j:plain

天然ゴムはイソプレンが鎖状につながった構造になっています。 f:id:jarmusch:20190209103818j:plain:w150 このイソプレンが複数くっついてポリイソプレンになります。 f:id:jarmusch:20190209103801j:plain ポリイソプレンは鎖状で長細い構造になっています。このままでは、ふにゃっふにゃで弾力性のない状態

ポリイソプレンに硫黄を加え加熱すると、二重結合していた炭素Cがぴゃっと手を伸ばし硫黄Sをつかみます。

つまり、炭素C同士が両手で手をつないでいたところ、硫黄Sが来たので… f:id:jarmusch:20190209103811j:plain:w400 炭素同士は片手で手をつなぎ、もう片方の手で硫黄と手をつなぐカンジ。

硫黄は別のポリイソプレンの炭素とも手をつなぐので、硫黄が複数のポリイソプレンの鎖に橋渡しする構造ができあがります。それが架橋

ふにゃふにゃだった天然ゴムが硬くなり弾力性が増加。「弾性ゴム」のできあがりです。さらに、加硫物は粘着性が少ないという性質も持ちます。

【弾性ゴムの製品としてのメリット】

  • 弾力性が高まる

  • 強度が高まる

  • 耐久性・耐薬品性が高まる

  • べたつかなくなる 

  • 製品として安定する

バルカナイズド製法でできたスニーカーは2~30年前のものでも履けるなどといいますが、これは加硫により二重結合部分が減少し、化学反応性が低下したことで劣化しにくくなったのもひとつの理由です。

というわけで、バルカナイズド製法による弾性ゴムが登場したことで、安定した品質のスニーカーの大量生産が可能な下地が整いました!

バルカナイズド製法の歴史

歴史的な流れも見ておきましょう。

バルカナイズド製法とは1839年にアメリカの発明家、ナサニエル・ヘイワードとチャールズ・グッドイヤーが発見した製法。当時のハイテク技術なのだ。

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ちなみに1839年は蛮社の獄が起こった年だそうで。蛮社の獄とは、高野長英、渡辺崋山などが江戸幕府の鎖国政策を批判したため起きた言論弾圧事件……。

日本、チョー江戸時代じゃん!!


ちなみに、ヘイワードとグッドイヤーはコネチカット州ロクスベリーにあるゴム工場Eagle India Rubber 社で職場の同僚として出会っています。

マッキントッシュと特許戦争

マッキントッシュコート、ご存知ですよね。おしゃれアイテム。いわゆるゴム引きのコートです。

霧の街ロンドンでは、ゴム引きコートは便利アイテム。雨が降ってもいちいち傘をささなくてもいいから。防水性のあるマッキントッシュクロスには加硫技術が応用されています。

とはいえ、マッキントッシュのコートはグッドイヤーにとってはもしかすると見たくもないシロモノだったのかもしれません……。

ハンコックのリバースエンジニアリング

晴れて加硫を発見したグッドイヤーは資金集めのために代理人を通じ、とりあえずイギリスのゴム会社に加硫ゴムのサンプルを見てもらうことにしました。

この時点ではグッドイヤー本人も厳密な製法を把握しておらず、サンプルを渡した相手に成分も伝えていません。

サンプルはマッキントッシュコートの共同開発者だったトーマス・ハンコックの手にも渡ることとなります。

その後、グッドイヤーは1844年にアメリカで加硫の特許を取得。イギリスでも特許を申請しますが、すでにイギリスで加硫の特許が取得されていることに気づきます。

というのも、トーマス・ハンコックが2ヶ月前に加硫の特許を取得していたのです!

ハンコックは主張します。

  • サンプルの分析はしていない!

  • 加硫は自分が発明した!

イギリスでの訴訟とグッドイヤーの敗訴

グッドイヤーはハンコックを相手取りイギリスで訴訟を起こします。結局、ハンコックはサンプルを分析したことを認めるのですがそれでも裁判官はこう判断を下します。

「たとえハンコックがサンプルを分析したとしても、加硫技術の手順をつきとめることは不可能だった」

グッドイヤーは敗訴します。

米英特許制度の違い

また、アメリカとイギリスの特許制度の違いもグッドイヤーの足をひっぱります。

  • イギリス→先願主義:先に出願したほうが特許取得できる

  • アメリカ→先発明主義:先に発明した方が特許取得できる

イギリスは先願主義です。当時のアメリカは先発明主義を採用していました(2013年から先願主義を採用)。
発明時期

  • グッドイヤー→1839年

  • ハンコック→1843年(ハンコックが自力で発明したとするなら……)

申請時期

  • グッドイヤー→1844年

  • ハンコック→1843年

つまり、ハンコックが自力で加硫を発明したという主張を認めたとして、タイミング的にはグッドイヤーの発明が先なので先発明主義なら裁判に勝てた可能性が高かったわけです。

※写真左がグッドイヤー。右がハンコック


ちなみに、当時は借金が返せないと刑務所に入れられる時代!!グッドイヤーはしばしば債権者から訴えられて刑務所にぶちこまれていたようです。なにかと不遇なグッドイヤー……。

スニーカー生産に着手するアメリカゴムメーカーたち

グッドイヤーは1844年にアメリカで特許を取得します。

その後、ライセンスビジネスを展開したため1800年代の終わりから1900年代のはじめに、アメリカ東海岸や中西部には多くのゴムメーカーが出現しました。 USA!アメリカスニーカーブランド12選【老舗の東海岸vs.センスの西海岸!?】 - 25着でオールシーズン着まわすメンズファッション

f:id:jarmusch:20190119185418j:plain:w400 【創立年・社名・創立場所】

1870年:BFグッドリッチ(中西部・オハイオ州)
1888年:コルチェスター(東海岸・コネチカット州)
1892年:USラバー(東海岸・コネチカット州)
1898年:グッドイヤー(中西部・オハイオ州)
1908年:コンバース(東海岸・マサチューセッツ州)

ゴム業界と時代背景

ゴム業界は勢いづきます。加硫ゴムは絶縁体に、工場のベルトコンベアに、それから自動車のタイヤへと姿を変えます。産業になくてはならない存在となったのです。

1892年にアメリカコネチカット州で誕生したUSラバーは4年後の1896年にはアメリカの株価指数「ダウ工業平均」の12銘柄にのぼりつめます。ゴム業界は当時のイケイケな業種だったのです。 f:id:jarmusch:20190119185400j:plain ※1896年のダウ工業平均の12銘柄

バスケットボールの誕生とコルチェスター社

加硫ゴムは運動靴を進化させます。

バスケットボールは冬期の室内トレーニングプログラムとして、ジェームズ・ネイスミス 博士によって1891年に開発されました。

場所はコルチェスターから80kmほどの距離にある、マサチューセッツ州スプリングフィールドです。

バスケットボールシューズに求められる機能性はこんな感じ

  • 床とのグリップ感・滑りにくさ→素早いダッシュ・ストップ

  • 方向転換・ジャンプなど

  • クッション性→ジャンプの衝撃を吸収

  • 耐久性→激しい動きに耐える

  • 足とのホールド性→急な方向転換に耐える

バッシュに求められる要素と弾性ゴムの機能性が合致してますよね~。

ヘイワードとコルチェスター社

加硫のビジネス化にグッドイヤーが駆け回る一方、ヘイワードは1847年にコネチカット州コルチェスターでヘイワードラバー社を設立。

そして1888年にヘイワードラバー社を引き継ぐ形でコルチェスターラバーカンパニーが誕生します。

コルチェスターラバーカンパニーは世界初のバスケットボールシューズ開発に乗り出します。

こちらはAlphaモデル。1892年誕生。

コルチェスター社は、すでにゴムメーカーとしてバルカナイズド製法のレインブーツやガロッシュ(靴用の防水カバー)を生産していたので、その技術を応用してスニーカーを開発したのです。

また、バルカナイズド製法のスニーカーはバッシュだけでなく他ジャンルでも重宝されます。

こちらはスペリーの定番デッキシューズCLOUD CVO(クラウドCVO)。1935年誕生。

世界初のデッキシューズを開発したのがアメリカのスペリートップサイダーです。

1935年にマサチューセッツ州レキシントンで誕生したスペリートップサイダーは世界初のデッキシューズブランド!
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こうして、加硫ゴムは運動靴のソールの地位を固めていきます。

モータリゼーション→ゴムは巨大産業へ

1908年にフォードのT型の生産が開始。モータリゼーションが幕開けし、自家用車が大衆生活に普及していきます。

自家用車が普及していく様子は「あらいぐまラスカル」を見るとなんとなくわかる。ラスカルの時代設定は1914年~15年もしくは1918年~19年ごろです。

自動車にはタイヤが欠かせないため、ゴムメーカーはさらに隆盛を誇るように。市場規模としてはスニーカーよりデカいのであります。

まとめ

以上、脱線しつつバルカナイズド製法について化学的側面や歴史的側面から解説してみました!

ちなみに、チェコやスロバキアには現在でもバルカナイズド製法を使ってスニーカー生産をしているファクトリーが複数あります。

the.the25-item.com マイナーっちゃあマイナーですが、チェックしてみてはいかがでしょうか!昔懐かしい感じのスニーカーです。

また、アメリカ陸軍もトレーニング時にバルカナイズド製法のスニーカーを採用していた時代があります♪ the.the25-item.com