【帆布とは?】キャンバス生地と帆布の違い!号数・オンスから号物ダックまで語るゾ

f:id:jarmusch:20190228164940j:plain:w250 工業製品だけでなくファッションアイテムにも取り入れられる帆布/キャンバス生地。

スニーカーやトートバッグ、カバーオールなどなど。ファッションでも帆布生地を使ったアイテムに、我々、とってもお世話になってますよね~!

そもそも帆布ってナニ?キャンバス生地と帆布の違いって?

結論から言うとキャンバス生地と帆布(はんぷ)は呼び方が違うだけでほぼ同じものです。キャンバス生地のことを帆布と言い、帆布のことをキャンバス生地と言う。


帆布とは、綿や麻素材の撚り糸平織りにした厚手の生地のことです。

帆布/キャンバスはその特徴からバッグや靴、テントやトラックの幌など、生地の強さ、耐久性が必要な製品に使用されます。


撚り糸とは、ねじり合わされた糸のこと。 f:id:jarmusch:20180605135020j:plain 出典:工場のご案内|株式会社タケヤリ

タテ糸とヨコ糸を交互に織り込むと平織りになります。 f:id:jarmusch:20180605135123j:plain 出典:平織物組織図|Wikipedia

帆布/キャンバスの特徴

  • 耐久性に優れ丈夫

  • 通気性がある

  • 使い込むほど味が出る

スニーカーだとCONVERSEVANSKEDS などでもおなじみですね~。

国内シェアNo.1の倉敷帆布!

国内では帆布の約70%を生産しているのが岡山県倉敷です。岡山は国産デニム発祥の地であり、制服生産シェアのトップを誇る土地柄でもあるのだ!

帆布は号数やオンスによって分類されるのだ!

号数やオンスによる帆布の分類をチェックしてみましょう。

【帆布の分類その1】号数による綿帆布の分類

一応、製品としての綿帆布の定義はこんなカンジになりそうです。

  • 平織物

  • タテ糸・ヨコ糸とも10番手以上を使用

  • 特にタテ糸に撚り糸を使う

綿帆布は糸の撚り合わせ数や密度によって1号から11号までに分けられます。 f:id:jarmusch:20180605135101j:plain 出典:帆布サイズ表|丸進工業

以前はJIS規格(日本工業規格)にも綿帆布のカテゴリーがありました(JIS L3102)。現在は廃止されていますが、業界的には廃止されたJIS規格をそのまま使用しているようです。 

【帆布の号数と用途】
1号 馬具の基布
2号 ベルトコンベアーの基布
3号 相撲の稽古まわし・船舶ハッチカバー
4号 体育館フロアシート・船舶ハッチカバー
5号 犬のオモチャ
6号 体育館用マット
7号 帽子・シューズ
8号 ホワイトデニム・モップ
9号 トラックのシート・ホワイトデニム
10号 空手衣・少林寺拳法衣
11号 エプロン・エコバッグ
(参考)[サイズ表|丸進工業](http://www.hanpu-ya.com/pg63.html)

 
こちらは防衛省の仕様書。 f:id:jarmusch:20180605135056j:plain 出典:帆布(CLOTH,DUCK)|防衛省仕様書改正票

丸進工業さんと規格はだいたい一緒なので、防衛省も昔の綿帆布のJIS規格を使用していたと考えられます。

ちなみに麻帆布のJIS規格(JISL3402)は健在です~。
JISL3402 001|日本工業標準調査会(PDFファイル)

【帆布の分類その2】オンスによる帆布の分類

オンスとは重さの単位。1平方ヤード(1ヤード×1ヤード)あたりどれくらい生地の重さがあるかで、帆布の厚みを推測し分類します。

  • 1オンス(oz)=28.349523125 g

  • 1ヤード(yard)=0.914m

オンスによる分類は、面積あたりの生地の重さなので厚みというより密度による分類です。号数とは逆で、オンス数が大きくなるほど生地が厚くなります。 f:id:jarmusch:20180605135120p:plain 出典:“号”と”OZ”|TAKE & SONS Official Site

平方ヤードあたり8オンス以上がオンス分類による帆布の定義。また、生地の厚みをオンスではなく1m²当たりのグラム数(g/㎡)で表わすこともあります。

キャンバス生地とその仲間たち!

canvasはギリシャ語の大麻(κάνναβις)に由来し、俗ラテン語 cannapaceus(麻から作られた[もの])を経て英語のcanvasに変化した言葉です。ちなみに麻の学名はCannabis sativa

また、絵の具の浸透を抑える処理をした帆布を枠や板に貼り付けた画材のこともキャンバスと呼びます。

ズックの語源!ダック生地とは?

キャンバス生地の仲間にダック生地というものもありまして。2本の糸を撚り合わせ1本にしたタテ糸と、1本のヨコ糸を織り込んだ、丈夫で耐久性に優れる帆布がダック生地なのだ。

ダック(duck)の語源はオランダ語のdoekで「粗い麻織物」の意味。日本ではそれがなまってズックと言われていました。

かなりの高齢の方にキャンバス生地のスリッポンスニーカーを見せると「ズック」と呼ぶはずです。地方によっては若者も同じものをズックと言うかもしれませんね~。

ちなみに、さっきの防衛省の仕様書のタイトルは「帆布(CLOTH,DUCK)」なので、少なくとも防衛省では帆布=ダック生地という認識になっているのではないかと思われます。

ダックを規格化したナンバードダック・号物ダック

ダック生地のなかでも特に、規格を定められ番号で分類されたものをナンバードダック(numbered ducks/ numbered cotton ducks)と呼びます。 f:id:jarmusch:20180814164656j:plain 出典:Development of the standard numbered cotton Duck Specification|United States Department of Commerce

アメリカの商務省(日本の経済産業省に相当)が1924年の技術論文で製造業者や消費者に向けてナンバードダックの仕様を確立しています。

こちらのの技術論文によるナンバードダックの定義は以下のとおり。

  • 平織物 

  • 太番手の撚り糸を使用

  • 機械織り

●ナンバーの算出方法
ナンバードダックのナンバーの算出もオンスによります

が、こちらの基準は 1ヤード×22インチの面積あたりのオンス。このオンス数を19から差し引くとナンバードダックのナンバーです。


ナンバードダックのナンバー#=19 - (面積1ヤード×22インチあたりのオンス数)


例えば、1ヤード×22インチあたり11オンスの重さがあるダック生地は#8(19-11)に該当するということになります。

  • 1ヤード=0.914m=36インチ

  • 1インチ=0.0254m

※名目上1から12までの重量で作られていますが、番号7,9、および11は使用されなくなりました。


ナンバードダックの規格について、1970年にASTM標準規格に定められたものがありましたが(D-230-44)、1975年に廃止されています。

【ASTMとASTM規格】
ASTMインターナショナル(米国試験・材料協会)は世界最大の民間・非営利の国際標準化・規格設定機関です。工業材料規格と試験法規格のASTM規格を設定・発行しています。

なぜシャトル織機で織られた帆布は貴重なのか?

さきほどご紹介した倉敷のバイストンの帆布は、希少なシャトル織機によって織られるのだそう。帆布のなかでも、特にシャトル織機で織られた帆布は貴重とされています!

そもそも”シャトル”ってナニ?

シャトルとは、「往復」を意味する織機用の道具のことです。タテ糸に対し垂直方向にシャトルをヨコ糸を通すことで布を織ります。 f:id:jarmusch:20180605135028j:plain 出典:Shuttles (for hand-weaving) of different age.|Wikimedia Commons
シャトルは日本では杼(ひ)とも呼ばれています。シャトルに内蔵された糸巻きの糸がヨコ糸となり、高低差をつけたタテ糸間を垂直に往復することで布ができていくのです。

シャトルを使って布を織る旧式の織機のことを、シャトル織機と呼ぶのだ!

ヨコ糸が往復するシャトル織機では生地の端に耳(セルヴィッジ)ができます。

しかしながら、シャトルは仕組み上、ある程度の重さが必要なため軽量化に限界があり、高速化することができません。


そんな限界を打ち破ったのが、レピア織機やジェット織機などのシャトルレス織機です。 特徴は、タテ糸の間を通るたびにヨコ糸が切断されること。


つまり、ヨコ糸の往復運動を手放すことで、高速・大量生産を可能にしたのです。 f:id:jarmusch:20180605135032g:plain 出典:耳の世界|シケンジョテキ(山梨県産業技術センター富士技術支援センター繊維部公式ブログ)

一方、高速化したシャトルレス織機では、太番手の重い糸が使えず厚手の布を織ることができません

ゆっくりな速度で独特な風合いの織物を作ることができるシャトル織機。ですが、生産性が低いため現在の大量生産化・高速化・ハイテク化された織布業界では出番がなくなり、製造するメーカーもゼロとなってしまったのだ……。

シャトル織機のデメリット
生産性が低い  
製品を均質化しにくい ・織機1台ずつにクセがある
・シャトル受けなど各部に革を使い気温や湿度変化で伸縮
メンテナンスに手間がかかる ・人の手によるきめ細かい微調整が必要
・扱える職人の高齢化・減少
・木製シャトルが摩耗する

なんとか機嫌をとれば帆布を織ってくれるがちょっとしか作らねえ!でも、この頑固ジジイ、ジジイ独自の味のある帆布をつくるし器用なのでいろんなタイプの帆布に対応できる。

そもそも極厚手の帆布はこのジジイにしか織ることができない。周りの人がなだめすかし、健康状態にハラハラしながら、働いてもらっている。シャトル織機をとりまく現状はそんなところなのだと思われます。

【おまけ】 松右衛門帆と日本の帆布

帆布は帆船の帆に使う布のことを指すため「ほぬの」とも呼ばれます。


日本の帆布製造は「帆布の祖」とされる工楽松右衛門から始まります。当時の帆船の帆は、ワラやイグサなどからできたむしろや二枚重ねの綿布を縫いつないだ刺帆を使っていました。
Sunset Sail 兵庫の播州出身、江戸時代の廻船乗りだった松右衛門は1785年に織機を開発。タテ糸、ヨコ糸どちらも2本引き揃えた太糸で織った「松右衛門帆」を生み出します。

松右衛門帆は刺帆に比べ、大判でかつはるかに丈夫。帆布を使った帆船はスピードアップできたため、日本の海運技術は一気に上昇しました。

まとめ

以上、知ってるようでほとんど知らん。帆布/キャンバス生地について解説しました。

知ったところでなんなんだ、という話ですがファッションアイテムで帆布のものは割と多いのでアタマの片すみにでも置いていただけたらと思います♪

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